zer0-san3’s blog

zer0-san3.hatenablog.comの漢字かな混じり墨字文バージョン。

こんにちはゼロサンです。

今回は前回と同じような感じになります。なので苦手な人はブラウザバック。

部(これでもう通じるやろ)についての話。

 

皆さん、株式会社Unlimitedさんの報告、ご覧になりました?

ゲーム部プロジェクトに関するご報告 | Unlimited Inc. (株式会社アンリミテッド)

ぼくは隅から隅まで読みました。

 

あのホームページ、オシャレですよね! トップページからアクセスすると、スクロールするたびに次から次へとリンクや画像が現れてくる。さすがのクオリティです。

 

動画も拝見しておりました。3Dの綺麗さとぬるぬるな動き、テンポの良さ、爆笑必至のシナリオ……ゲームももちろんみんな上手くて、ゲームに詳しくない俺からしたら専門用語がいっぱいでちんぷんかんぷんですが、とにかく楽しそうにプレイしていて、すごいなあと思っていました。

 

よね?

 

なんでここまで出来る皆さんなのに、運営側の人間が表立って名前出して謝罪もせずに、「声優スタッフ」が「別アカウント」で謝罪してるんですか?

なんで全部そのままなんですか?

 

別に表立って謝罪しろというわけではありません。

そんなこと意味がない。中身が変わらないのに出てこいっつって謝らせたところで、どうにもならない。

 

いや、分かってる。他社の各運営アカウントが火消しに回ってるのも知ってる。それは単に「自分たちに飛び火しないように」ではないことも、ツイートを見れば分かる。

朝ノの長女、DJ RIO、そういったアカウントが何を言っているのかを少しくらいは分かっているつもり。

そんな中で、オーバーライディアが逆に運営企業に厳しい言い方をしているのも。

 

火消しは火消しでも、飛び火を防ぐなら「うちはあそことは違うから」というやり方が一番やりやすいだろう。

事実、これまでの炎上では、幾人かのバーチャルYouTuberが(あくまで事務所としてではなく、タレント本人が)怒りという形で火消しをマネジメントしていました。

マネジメントではなく単に怒っただけの人もいます。でも怒りを表明することで、「うちは違う」と示している人もいるようでした。

今回はそうでなく、運営だって頑張ってるよね、みんな運営のこと何も分かってないよね、という姿勢が見えます。

考えられる理由としては、これからも各運営企業が株式会社Unlimitedと関わっていく可能性があるから。大きなVTuberを抱えていて、案件も取ってきている企業ですから、他の運営企業も関わりを避けては通れないでしょう。

そして、それ以外にも、俺たちの側からは見えていない事情があるのかもしれない。運営の中でも何かしら対応している人がいるのかもしれないし、「声優スタッフ」なる人の言い分をすべて信じるわけにいかない部分もある(特に瑠璃姉さんが言及しているのは、そういった事情の部分だと思う)。

それは俺も分かる。

 

でもじゃあなんで、企業として最低限のことが出来ていなかったんですか。

なんで「声優スタッフの業務内容や業務量を適切に管理し、業務情報を共有する立場の人間がいなかった」んですか。

なんで「いじめとも受け取られるコミュニケーションが度重なりあった」のに、そこについての具体的な対策が何1つ書かれていないんですか。

11日(本日)に声明文出すって言って延期になったやつの中に、そういう文言が入ってる予定だったんですか?

 

なんで「本人」が別アカウントで謝ってるんですか。「誰」なんですかその人たちは。なんの立場なんですか。「声優スタッフ」って「誰」ですか。いやもう良いです言わなくて。

「本人」が「見るひとの心と作品に傷をつけてごめんなさい」、て、何を言わせているんですか。そんなこと言うな、悪かったのは運営の人間だって怒るところだろ。株式会社Unlimited。みんなも怒れよ。いや「本人」へのリプじゃなくて、みんながみんなの見えるところで怒るべきだろ。心と作品に傷をつけたのは誰なんだよ。傷付いたのは誰なんだよって。

尊厳が傷付けられて苦しみが増長してる、そんなこと誰も望まない、逃げてくれたらそれで良かったのに。

 

「声優スタッフ」に凸るオタク、企業のお問い合わせフォームに感情書き殴るオタク、やめろやめろやめろ。

既に腐った情報を悪臭漂わせて動画にまとめるVTuberもやめろ。黙れ。

 

もうこれ、2度目はないんだよ。分かるか。どれだけ「声優スタッフ」が運営の中で詰られても蔑まれても、2度目はないんだよ。その重みが分かるか。

パワハラに関する待遇が改善されたのかも悪化したのかも俺たちの目には分からないんだよ。

分かる機会がなくなるんだよ。

運営に対して俺たちがどれだけ意見したって不買したって、ぜーんぶそれが「声優スタッフ」なる人に流れ弾としてぶち当たっていく可能性もゼロじゃない。そして買ったところでそれがぜーんぶ運営に流れていく可能性だってゼロじゃない。

地獄だろ。グロテスクすぎて吐き気がする。

 

楽しみたかった、傷付きたくなかったのは、「本人」たちだっただろうに。

 

もうなんか、スタバの新作の苺のやつ美味しく飲めてるといいな、とか願うしかないのが、悔しくて悔しくて悔しくてたまらない。

 

以上、、

お気持ち表明ブログでした。

それでは。

こんにちは、ゼロサンです。

触れたくない人もいると思う件について、まとめてお話ししたいので、ゾーニング用にこちらに書き込みます。

読みたくない人はブラウザバック。あと、例えよくお話しする仲の良い相互さんであったとしても、俺自身はミュートされても仕方ないと思っているので、ご判断お任せいたします。

ただ、酷いことを言っている、している自覚はあるので、ツイッターでの言動を気を付けて参ります。

 

ここを開いてらっしゃる方はどの件についての意見なのか分かると思うので、今更説明はしません。

何より、本当にそんなことが推しに降りかかっていると認めたくない。(まだ何も確定情報も出ていないからというだけでなく)おぞましくて名前も口にしたくない気持ちがあります。

ここからは、俺自身が今現在思っていることをただ書き連ねるだけです。憶測やデマも混じっていると思います。

以下。

 

俺は推し事と人生が融合しつつあるので、自分が楽しめるかどうかは考えていない。問題が起きても楽しめるかどうかの問題でもないし、無論楽しむことなんて出来ない。解決してくれと願うだけだ。

4/9追記:「こんなんじゃ楽しめない!」って怒ってる人たちに対する違和感の言語化でした。今思えば、そう怒っている方たちも、きっと「楽しめるかどうか」が問題の主軸ではないことを前提としているのかもと反省しています。もちろんエンターテイメントの一種なので、楽しめるかどうかも重要ですが、まずは推しの労働環境の話かなと思い書きました。

 

あと、内部告発は必ずしもマイナスではないと思っている。我々には知る権利がある。

だからこそ透明性が必要になるのであって、それをこんな非公式な内部告発だけで終わらせてたまるかとも感じている。

もしあのアカウントが本当に4人の別アカウントであり、告発内容が事実であるならば。

 

知ることが出来れば、今後考えを改める姿勢を示されるまで、俺たちの側から何らかの形で意思表示をすることが可能になる。その意味での透明性、可視化というものはどうしても重要な位置付けとなる。

全ての問題が知らされるべきとは思わないが、どうしても閉塞的になりがちな場所だからこそ、開かれるべきだ。

色々と企業側に制限を与えられているならば、最後の手段として内部告発はあり得る。

 

ただ、あのアカウントが本当に4人の別アカウントであり、あの4人の内実について告発したものであるならば、悪手だったと考える。

「別アカウント」と聞いて「なかのひと」をイメージする人たちに多大なダメージを与える。そして業界全体の信用度にも影響してしまう。あくまで、 "もし本当であったならば" 、今回の手法はこの二点においてやはり最大の悪手だろう。

もしもその手段を取らざるを得なかったのであれば、なんというか、悲しい。

 

あと正直「なかのひと」なる解釈をする人とは、お互いにお互いの大事なところを踏み抜いてしまう仲だと思うので、これからもきちんとした距離感でやっていかなければならないだろう。

「なか」に「ひと」がいるだなんてグロテスクすぎて考えられないのが素直な感想で、俺は本当にただの「別アカウント」「別のアバター」としていつも捉えているのだけれど、こればっかりはどうしようもない。そういう想像が離れない人もいるだろう。だから、限界迷惑厄介オタクは静かに1人でトイレにゲロゲロしておきました。今も冷や汗と涙が止まらない。

これまで便宜上「なかのひと」という言葉を使ったことがあるが、もうたくさんだ。

 

ショックすぎて「なかのひと」の話をリツイートしてしまったけれども、やはり良くないだろうと思って消した。何より自分自身が一番、気持ち悪かった。

憶測やデマを含んでいるかもしれないのに、さも本当に本当のことのように、注意書きもなく公表する情報系ナンタラとかの肩書を名乗る存在たちにも、かなりウンザリしている。

こうして自分が憶測をある程度鵜呑みにして垂れ流してるのも、自分で鬱陶しいというのに。

 

そういうわけで、今日はここまで。

 

 

 

最後に。好きだぞ道明寺。過去形にしてたまるか。

プロフィール

 

ツイプロ分からないので使い慣れたほうでやります.推しの名前は敬称略.

読み物に感想があると嬉しいです.

 

○年齢:成人済み

○最推し:キズナアイ(@aichan_nel)

○その他の推しorチェックしてるV:

おめがシスターズ(おめシス)/電脳少女シロ/花京院ちえり/ばあちゃる/ミライアカリ/輝夜月/ピンキーポップヘップバーン(PPH)/ゲーム部プロジェクト/道明寺ここあ/MonsterZ  MATE(MZM)/朝ノ姉妹ぷろじぇくと/天神子兎音/富士葵/ときのそら/YuNi/月ノ美兎/樋口楓/かしこまり(ちゃんまり)&パンディ/ホシアカリ/塩天使リエル/燦鳥ノム/アメノセイ/田中ヒメ&鈴木ヒナ(ヒメヒナ)/飛高あのん/流石乃ルキ&ロキ(ルキロキ)/由宇霧/KMNZ/AZKi/佐藤ココ/あおぎり高校ゲーム部/花譜/ヤッターマンチャンネル/理原ひなり/ゆえんず(アヤミナ)/小町ノノ

 

質問箱:

https://peing.net/zer0_san3

 

おめシスSS:

https://www.pixiv.net/member.php?id=37604275

 

個人的なことやえっちなことをつぶやくゾーニングアカウント:

@ZER0_YON4

某ばん組から思ったこと。

お久しぶりです。ゼロサンです。

最近ブログを更新できてないですね。ひらがな訳もしてない……申し訳ないです。

 

個人的なことで、ちょっと推し事をお休みしようかと思って昨日思わせぶりなツイートをしてしまったんですが、我慢できずに『のばん組』を観てしまい、感想をつぶやくまでやっちまいました。

しかも「おやすみ」ツイートをしておきながら、その後のとりいPの配信まで観てしまい、寝る寝る詐欺どころじゃなくなった始末。かまってちゃんのようなムーヴをかましてしまい、我慢のできなさに自嘲しております。

 

一応「個人的なこと」をお話しすると、予定を立てられずに色々な人を巻き込む事態を現実で起こしてしまい、その後も小さな事件がいくつか起きて自己肯定感だだ下がりになってたんです。そんな中、なんとアイちゃんの秋葉原UDXでのライブ映像公開の予定を脳内で別レイヤーに保存しており、ダブルブッキングをやらかして行けなくなりました。

予定の立てられない自分を散々責めたあとのそれなんで、自分の中で自尊心が音を立てて崩れて、もう推しの情報見るだけでキツくて、、でもやっぱり、習慣になってると、手放すのも難しいですね。しんど。

 

そんなわけで、『のばん組』もガッツリ観てしまいました。

自分は予定を立てるのが本当に世界で一番苦手すぎて、時間を守るということがほとんど無理なので、テレビ番組も決まったものを観る習慣がありません。拒絶反応レベルです。

『BEATスクランブル』も、とりいPには「観てました」と言いましたが正直そこまでちゃんとは観てないです。情報を確認する程度。『キズナアイのばん組』からようやく一部間に合ったりしていた、というくらい観れてません。テレビを観られる性格じゃないからYouTube観てるんだし、とまで思ってました。

本当にキズナー名乗るの辞めろ、と自分で思うんですよ。でもこういった推し事がきちんとできていないことに対して、「好きなら行動で示せよ」という自戒も含めて、ケジメとして「最推し」と掲げているので、これからはなるべく行動で示していきます……。一番好きなのはホントなので。

 

最近は酒を入れれば「予定を合わせること」への不安や苦痛が和らげられることを知って、他にも色々工夫することで、アイちゃんやおめシスの生配信には間に合わせることができています。

おめシスに至っては時間になったらいち早く動画を観ているので、「本当に時間合わせるの苦手なのか?」ってなります……(たぶん、自分で時間を決められるかどうかがキモなんだと思います)。

 

ここからが本題。

『のばん組』に関しては、自分が唯一「テレビの前でそわそわしながら待つことができる」番組でした。それだけ、「予定を合わせること」へのストレスを番組への期待感が上回っていました。

アイちゃん自身の可愛さと面白さはもちろん、芸人さんとの絡みによって新たな魅力が発見できるところもポイントでした。

『のばん組』に出ているアイちゃんは、動画の自由さとはまた違う、本当に頭の回転の速い名MCで、場を回すことにだんだん慣れていく様には毎度驚きが隠せませんでした。話すのも聞くのも上手い。話を引き出すのもだんだん上手くなる。思わず引き込まれていく、そんな安定感と遊びのあるトークが大好きでした。

「自由にやっている」ように見せる。計算された振る舞い、と同時に「どこまで考えてやってるんだ?」と思わせるような抜け感というか。いつもの動画でも感じますが、『のばん組』では特に強く印象に残っています。

だからこそ、なぜ『のばん組』なんだと。なぜ『キズナアイのばん組』ではダメだったのか、と思っていた部分は正直ありました。まあ最推しだからフル尺で出ていてほしかったってとこもありますけど。

 

そう思い始めてから数回、そして最終回も終わってとりいPの配信まで観て聴いていて、今ではだいぶ考え方が変わってきたように思います。

面白かった。『のばん組』になっても尚、いや、『のばん組』だから面白いと思える部分があった。

色々なVがいて、それぞれがクリエイターとして磨き上げられるべき個性があると知ることができた。それは大きな収穫でした。

 

あと嬉しかったのは、おめシスの成長も見れたこと。「紹介するのコーナー」を担当してきた経験から、「自分たちらしさ」と「求められるトークの情報量」を両立させることに慣れてきたのではないかと勝手に思ってます。最近の広告や、動画内でもそれが如実に表れていて、本当にすごいなって憧れの気持ちが湧いてきます。

最終回でアイちゃんと共演したときは、泣いてしまいました。自分がレイちゃんの『のばん組』告知動画へリプしたとき、「どきどきやばい」とリプ返がきたので、てっきりもっと緊張しているんだと思ってたんですが、そんなことは微塵も感じさせない話しぶりに、ただただ尊敬と憧れが溢れて止みません……。

(思い返せばこの姉、Count0のときも「緊張する」とか言っておきながら全然喋ってたし緊張詐欺じゃねーか)(詐欺ではない)

最初から仲が良い同士みたいに話していてびっくりしました。リオちゃんは緊張してたのか(テンション上がってた?)手めっちゃブラブラしてましたけど。レイちゃんも最初ずっと手後ろで組んでましたけど。レイちゃんってテンション上がってくると髪気にしますよね? 今回ちょっと気にしてたっぽいんで(略)

 

またおめシス関連の言語化が激しいのでこの辺にします。おめシスのことになるとこんなに言葉が出てくるのなんで?

 

で、タレント自身の魅力というのもそうですし、番組構成としてもやっぱり最終的には良かったと思ってます。結果論ですが。

アイちゃんが芸人さんと絡むことに関して苦言を呈する人の気持ちも分からなくはないです。俺たちはVの者が好きなんであって、リアルな人間を見たいわけではない。でもやっぱりアイちゃんは面白くお話しできる力があるので、魅力たっぷりのコーナーだったと思います。

紹介するのコーナーも、「アイちゃんが目当てで観ている」人には少し必要性に疑問があったかもしれません。しかし、Vの世界の裾野を広げることは、結局アイちゃんの目指す方向に繋がっているのかなとも思います。「世界中の人間のみんなと繋がりたい」なら、Vの側も盛り上がってもらったほうが断然良い。

(裾野を広げることが良いことかどうかは別です。人を増やしすぎるとコンテンツは簡単に腐るので。)

 

ただ、BS日テレを観る層にVのことを知らせる方法としてはもう少し何かあったのかもしれないとは思います。テレビ観ないけど、テレビを観ている層ってもっとなんか……暇だからテレビ観よう、で、ふと見かけた番組が面白かったら観るって感じじゃないですか。想像ですが。もしテレビをメインで観る層にも訴えかけるつもりでいたなら、もう少し違った形もアリなのかなとは思いました。

某アニメにも同じことを感じてます。だってあれってただの大型コラボ……あっ関係ないので黙ります。

 

もっと言いたいことがあるんですが、処理速度が知的ボーダーラインな俺には、今はこれくらいしか言えません。そりゃ直後だと色々咀嚼しきれない。時間がほしい。

本当はもっと続いてほしかった。これで本当に終わるなんて信じられなかった。重大発表! 番組名が変わって4月から新番組! ってなってほしかった。

とりいPは諦めていないと言っているので、それを信じたい。また次があると思っています。だから次はもっと応援したいです。

 

しかし何にせよ、推し事はやっぱりもう少しおやすみします……。ツイッターは気になるのでちょこちょこ顔は出しますが、動画とかは控えるかもです。しんどい。あまりにも。

 

それでは。

鏡の中の双子

その日はちょっとだけ、機嫌が悪かったんだと思う。


「レイちゃんなんてもう嫌い!!」


ドアを開けて外に飛び出す。バン、と、強い音を立てて、玄関のドアを閉めた。

レイちゃんとケンカした。珍しく、大声を出して怒ってしまった。


「ちょ、ちょっとリオちゃん! え、え!?」


戸惑うレイちゃんに少し、いやすんごく心が痛みながらも、どうしても嫌な気持ちが収まらない。頭を冷やそうと思って、そのまま走り出す。

風を感じる。夜風だ。春に向けて少し肌寒い風。いちおー、出るときにコートはかっぱらって来たから、耐えられなくはないかなって感じ。


今回のは、きっかけはちょっとした行き違いだったけど、ずっとモヤモヤしてたことが爆発しちゃったんだよねぇ。

なんかさぁ最近あの人、はっちゃけすぎだと思う。昔はもっと静かでおとなしくて私にだけすんごい喋るみたいな感じだったのに、こないだもさぁオフでぽんぽことピーナッツに趣味の話ふっかけてたし。そゆとこだよね。

私にもどんどん冷たくなってくし、最初より趣味全開で私を振り回すし……なんなんだろ。

それから他にもさぁ……あれ、なんだっけ? 忘れちゃった☆


そんなわけで、最近のレイちゃんの変化にはモヤモヤしてたわけです、私は。それがなんかヤだったんだよね。なんでかは知らねーけど。


どこに行こうかと迷いつつ、3kmくらい先の公園に向かう。

最近甘いもの食べすぎだから、VR以外でも運動しよって言って、昨日から2人で始めたランニングで目標地点にしてたところ。

3kmってけっこう距離あるよねー。


子どものころは、レイちゃんも運動がそれなりに好きだった記憶がある。私が運動好きだから、一緒に付き合ってくれてたっけ。最近はもう、動いて遊ぶことも減っちゃったなぁ。

今はなんであんなに引きこもるようになっちゃったんだろ。


公園にたどり着いた。少しは頭が冷えたかも。ちょっとトイレ寄ろうっと。で、休憩してすぐ帰ろう。


トイレで顔を洗って、鏡に向き合う。あ、やっべぇハンカチ忘れた。

どうしてケンカしちゃったんだろ。レイちゃんが変わってくことは、悪いことじゃないのに。


ベンチに座って休憩しようとしたら、一瞬、足がぐらついた。疲れたのかなぁ。なんだか、めちゃくちゃ眠い。すんごい眠い。ああ、ダメだ、こんなところで寝たら——

 

 

 

目が覚めると、家のベッドの上にいた。なんで? レイちゃんが運んでくれたのかな……あの運動不足のレイちゃんが?

もしそうなら、本当に悪いことしちゃったなぁ。

時計をひっつかんで目の前に持ってくる。朝の8:30だ。

隣のベッドを見ると、レイちゃんが寝ていた。相変わらず寝相悪すぎ。お腹出てるし、ぴょこぴょこもどっかいっちゃってる。


謝んないと。というかどこにあるんだろ、ぴょこぴょこ—— と、探そうとして、レイちゃんのベッドに近づく。

すると、いつものレイちゃんからは感じられないような香りがした。なんて言っていいのか分かんないけど、なんかオシャレな香り。香水かシャンプーかな? 珍しい。

ぴょこぴょこを探してみたけど見つからない。そんなわけない、外しても絶対近くにあるはずだ。

ない、ない、ない。ベッドの下も周りもない。布団めくってみてもどこにもない。おかしいなぁ。


「ん゙ー……。」


ベッド周りでもちょもちょしてたからか、レイちゃんが不機嫌そうに目を覚ました。


「レイちゃんおはよー。ねー、ぴょこぴょこ知らない? レイちゃんの。」


昨日のこと、謝りたいけど、謝るのはレイちゃんが完全に起きたあとにしよ……とか考えながら、レイちゃんにぴょこぴょこの場所を聞いてみる。寝起きだから喋りたくないかもしれないけど、もし無くしてたら大問題だ。

そしたら、完全に予想外の答えが帰ってきた。


「なにそれ……?」


え? レイちゃん……?

いや、まだ頭がぼーっとしてるのかもしんない。意味が通じない、なんてことはないだろうし。


「ぴょこぴょこ! レイちゃん頭にいつもつけてるでしょ! 赤い! サツマイモ!」


説明つければ、さすがの寝起きでも分かってくれるっしょ。あと、できれば起きて一緒に探してほしいなぁ。ほら今日は動画撮らなきゃだからさぁ。

レイちゃんは、「うーん」とか「んー?」とか、寝起きの悪い人間特有の独り言を発しながら、ずっとベッドの上をゴロゴロしていた。そしてしょぼしょぼした目をこっちに向けて、


「ぴょこぴょこって、なに?」


ムスッとした顔で、ハッキリと、そう言った。

え? うそでしょ?


「レイちゃん……ぴょこぴょこ、分かんなくなったったの……?」


不安になり、もう一度聞いてみる。


「んー、……なんのことぉ……? わたし、頭に飾りとかつけたことないけど……。」


眠気覚めてないっぽい顔だけど、確かな口調でそう答えた。

ぴょこぴょこで通じなかった、どころではない。「頭に飾りとかつけたことない」? それはバヤ。そんなわけがねぇ。


「ねーぇレイちゃん、寝ぼけてんの? ほら、あんたさぁ、赤いサツマイモのついたさぁカチューシャみたいなやつ、いつもつけてたじゃん。わかる? アレどこやっちゃったの? ねぇ。」


つい、まくし立てるように聞いてしまう。

だって、だってそんなわけがねぇんだ。アレは、ぴょこぴょこは、レイちゃんのトレードマークで、大事なものなんだ。

マジで忘れちゃったのかな。キオクソーシツ? いやでも、ぴょこぴょこのことだけ忘れるとかある?


「サツマイモのついたカチューシャなんてあるわけないじゃん。」


「いや、それはコトバのアヤというか……こう、赤いリボンみたいなのがついたやつ! あんた自分のトレードマーク忘れちゃったの!?」


「トレードマーク?」


こいつマジで覚えてない……?

そんなわけない、そんなわけが、と独り言をつぶやきながら、ベッドの周りを必死に探すも、どこにもそんなものは見当たらない。まるで、最初から存在しなかったみたいに。


「ねぇ、レイちゃん、これドッキリ? どっかに隠してるんでしょ、ねぇ。レイちゃん。」


それしかない。ぴょこぴょこがないわけない。レイちゃんが存在を忘れるなんてことも、ありえない。

ドッキリだったら、いつもみたいに、ここで笑いながらネタバラシしてくれるでしょ。


「……ねぇリオちゃん、あんた大丈夫?」


本気で心配された。その言葉が、決定的に、私の方が間違ってるってことを突きつける。


「ほんとに、ほんとにドッキリじゃない……?」


「どーゆードッキリ?」


「レイちゃんのぴょこぴょこがなくなっちゃったドッキリ……。」


「だからぴょこぴょこって、なに?」


まるで何のことか分からない、というレイちゃんの反応に、ふわふわとした現実みのなさを覚える。


「………………ちょっ、と、頭が寝てたわ。夢でも見てたかもしんない。」


全然納得出来ないけど、たとえドッキリだったとしても、今はこっちが引き下がるしかない。


「顔色、悪いよ? もっかい寝る?」


これ、いつも体調崩したときにしてくれる顔じゃん。よっぽどだな。

顔を覗き込んできたレイちゃんから、またふわりと良い香りがして、頭がクラクラした。


「……いや、いーや。今日動画撮るでしょ。」


正直混乱してるけど、まずは今日やることをしなきゃいけない。他の日も予定詰め詰めだし、今日やらなきゃ。

動画を……そうだ、動画。動画を見れば、どっちがほんとか分かるはず。

まだどっかで、レイちゃんの反応を信じられない自分がいた。


ひとまず朝の支度をして、レイちゃんに撮影の準備を任せている間、スマホにイヤホンを刺してYouTubeを開く。なんでもいい、動画を見ないと。

おめがシスターズ。自分たちのアカウント——


画面の中には、ツインテールの私と、……ぴょこぴょこのないレイちゃんのアイコンがあった。

アイコンだけ変えてるかもしんない。そういうドッキリかも。たぶんレイちゃんは今ごろ反応を楽しんでるんだ。動画なら変えられないはず、動画なら……。

すがるように画面をスクロールする。でもそのサムネに、ぴょこぴょこをつけたレイちゃんが写ってるのは一個もない。

サムネだけ差し替えた? そんなバカな。そこまで手の込んだことはしないでしょ。


試しに1つ再生してみようと思って、たまたまその画面にあった双子ドッキリの動画を開く。11/22の「ツインテールの日」に視聴者のみんなへ仕掛けたドッキリを、11/25、「いい双子の日」にネタバラシした動画。


『レイちゃん… 投稿していくよ…(小声)』


『いいよ!(小声)』


『いくぞ…(小声)』


『絶対すぐバレるけどね』


そこにあるのは確かに、自分たちで撮った記憶のある動画だった。声も、喋ってる内容も、喋り方も、動きも、間違いなく私の知ってるレイちゃんだ。

ただ、記憶と1つ違うのは、そこにいるレイちゃんに、ぴょこぴょこがないこと。


どうにか編集して動画を差し替えた? そんなこと出来るんかなぁ。ぴょこぴょこだけ消すなんて。昨日私が出てってから編集したのかな。

色々考えてたら、いつのまにか、見ていた動画も半分を過ぎて終わりが近づいている。


『俺らってやっぱ 双子なんだよな…』


そう、そうだ。私たちは双子だ。

2人ともそっくりで、これまでずっと隣にいて。私たちは、双子なんだ。

再確認するように、自分の言葉を噛み締めた。

なんだろうなんか、見失っちゃいけないものを、見失っちゃいそうな気がする。


「リオちゃーん、準備出来たよー!」


撮影準備が終わったレイちゃんが声をかけてきた。


「はぁい。今行くー。」


ぬぐえない疑問を払いながら立ち上がる。正直まだ信じらんないけど、私がおかしいのかもしんないし、今は黙ってよう。


……あ! 髪結んでねぇ!


「レイちゃん待って!」


あっぶな。どんだけぼーっとしてたんだろ。さっき「ツインテールの日だよ」って言ってる動画見てたくせに。

いや、ワンチャン、今日だけはこのまま撮ってもいいかも……?


「どしたの?」


レイちゃんがこっちを覗き込む。「早く髪結んで!」って怒られるかなぁ、と思ったけど、なんも反応なし。


「や、あの、今日さぁ、髪下ろして動画撮ろっかなって。イメチェン……みたいな?」


自分でも何言ってんのか分かんねぇなコレ。そもそも、なんで髪下ろして撮ろうなんて思ったんだろ。絶対ダメじゃんそんなの。よく考えてなくても、いきなり髪下ろして撮るとか、みんなもさぁ混乱するでしょ。やっぱやめ——


「いいんじゃない?」


「え?」


「じゃあ今日から、そうしていこっか!」


ウソでしょ。


それからあとは、何をしていたかあまり思い出せないまま1日が終わった。頭の中に残っているのは、レイちゃんの香りと、動画を撮ったというぼんやりとした記憶だけ。

まさかほんとに髪下ろしたまま撮影するなんて。


「リオちゃん、あとはわたしがやるから、ちょっと寝てたら? 明日は朝早いし。」


「うん……。」


よっぽど具合悪そうな顔してたんだと思う。あとはアップするだけなんだけど、机から追い出された。


ベッドに横になる。スマホをつけたら、おめシスの今日の動画がアップされた通知が来ている。どんな反応が返ってくるんだろう—— 不安に思っていたのに、知らない香りに包まれて、すぐに眠気に吸い込まれてしまった。

 

 


目が覚めた。時計を見ると、8:25だ。もう朝じゃん。そんなに私、疲れてたんかなぁ。

もしくは、あれは変な夢だったのかもしれない。レイちゃんがぴょこぴょこのこと忘れるなんてありえないし……。


隣のベッドを見ると、レイちゃんが寝てた。ぴょこぴょこは……ある。ベッドの頭のところに。

やっぱり夢だったんだ。


「レイちゃん、起きてー。今日動画撮る日でしょあんた。」


とりあえず、レイちゃんを起こさなきゃ。1周年も近い中で、動画撮ってアップするだけの日って、今日ぐらいしかないし。明日は朝予定があるから、早く撮って、遅れが出ないように仕上げて、早めに寝ないと。


「うーん……ん、リオちゃん……? リオちゃんだぁ……」


レイちゃんが目を開けて、微笑んだ。なんか普段と違う雰囲気に、違和感を覚える。


「レイちゃん……?」


こんなスッと起きる人だっけ、レイちゃんって。ぼーっとはしてるみたいだけど。


「リオちゃん、おいで。」


こんなに甘い声で喋る人だった……?

言われるままに側に寄ると、腕を引かれた。そして空いてる方の手で、ベッドの上をポンポンと叩く。


「一緒に寝よ?」


急に何を言い出すんだこいつは。きも……とか思ったけど、不思議と嫌な感じはしない。


「いや、レイちゃんさぁ、今日動画撮るんだよ? 起きてよ。」


言いながら、レイちゃんに添い寝する形で隣に横たわる。1人用ベッドなので、顔が近い。

するり、とレイちゃんは私の背中に手を回して、そのまま抱きしめた。まるでこれまでもそうしてきたかのように、自然な仕草だ。そして、レイちゃんの匂いがする。

私の方も抱かれるがまま、ぎゅっとレイちゃんのパジャマの裾を掴んだ。


「リオちゃん……。」


優しく、名前を呼ばれる。手で髪を梳かれ、背中を優しくトントンされる。

一体、何が起きてんの……?

なんか、嫌じゃない。むしろ心地よくて、でもやっぱり違う気がする。というか、今までこんなことなかったじゃん。これも夢なの?


「レ、レイちゃん、あのさ……。」


「ん? どしたのリオちゃん。」


レイちゃんの様子がおかしい。こんな甘い声で囁かないし、用がなければ人に触れたりしない。

いつもと違うレイちゃんに、どう接していいか分からず、


「あのさ、今日動画撮らなきゃじゃん。起きよ?」


ひとまず身体を起こした。


それからも、ずっとレイちゃんはおかしかった。

撮影中も、ふだん私の方なんか全然見ないのに、チラチラ見てくる。目が合うと、へにゃりと笑う。これまでそんなことなかったじゃん、なんで?

撮影が終わったあとも、いつもなら「オッケーかな?」とか言いつつすぐ映像チェックするのに、


「楽しかったね!」


まず一番にこっちに笑いかけてきた。


「そ、そうだね。楽しかったねぇ……。」


なんだこのノリ。調子狂うわ!


「特に撮り直ししなくてもいいかな?」


「いいんじゃない? てか、レイちゃん私のこと見すぎでしょww」


「え? そう? いつもこんなもんじゃない?」


んなわけあるか、とツッコもうとしたら、


「それよりさー、リオちゃん。今日はもうこれで終わって、一緒に買い物にでも行こっか。それかゲームする?」


レイちゃんからびっくりするような提案が出てきた。


「え……。レイちゃん。これ今日編集して今日出すって言ってたやつだよ?」


「でもさぁ動画の告知まだしてないじゃん。今日は出さない、ってことにしてさぁ、遊び終わってから編集しよ? それで明日出せばいいじゃん。」


何言ってるんだこの人は。今まで動画で手抜いたこと絶対なかったじゃん。急にどうしたの?


「最近忙しいから、今日はリオちゃんといーっぱい遊ぶって、決めてたんだぁ。何かしたいことある?」


レイちゃん……?


「ほんとにそのスケジュールでいいの……?」


「たまにはさぁ休んだって、バチ当たらないよ!」


まぁ……レイちゃんがそう言うなら、いい、のか。

着替えようとして、なんの気なしに、部屋のガラス窓を眺める。なんとなく、普段と違う顔をした自分がいる気がして、すぐに目をそらした。


その後は珍しく2人で買い物をして、帰ってからゲームで遊んで。

夜になるとレイちゃんは、1人で編集を始めた。


「リオちゃんはもう、寝てていいよ。今日はさぁ、たっくさん遊んだし、疲れちゃったよね。」


いつもなら私をコキ使うくせに、今日は珍しい。本当に調子が狂う。


「でもさぁレイちゃんも疲れちゃったんじゃないの?」


「わたし? わたしは別に疲れてないよ。リオちゃん早く寝なよ。こっちはすーぐ編集終わらせてぇ、パパッと寝ちゃうからさぁ。」


これから編集をやるっていうのに、なぜかちょっと機嫌良さげに見える。なら、お言葉に甘えて、もう寝ちゃおうかな……。

こーゆーの、まどろみって言うんだろうか。とにかく、ふわふわした状態の中で、ほんとにこれでよかったんかなぁとか考えてたら、眠ってしまった。

 

 

 

目覚ましの音が鳴って、飛び起きる。今は8:20。今日はupd8の人と打ち合わせがあるんだった。レイちゃん、昨日撮った動画の編集終わったのかな。なんて考えて隣のベッドを見ると、信じられない光景があった。


レイちゃんのぴょこぴょこがない。どころか、髪の長いレイちゃんがいる。私と同じくらいの、腰に届くような長さの髪のレイちゃんだ。

え……? これって……。


「レイちゃーん……おはよぉ。」


恐る恐る、レイちゃんを起こそうと声をかけながら近づいて—— 思わず立ち止まってしまった。この香り、覚えてる。

夢の中で嗅いだ香りだ。知らない香り。知らなかったはずの香り。香水か何か分からない、けど、夢の中で……。


とにかくレイちゃんを起こさなきゃ。しかし全然起きない。ぴくりともしない。寝起きの悪さは、いつものレイちゃんだ。最初の一言で目が覚めないとなると、叩き起こすしかない。


「レイちゃん! 起きて! 時間だからぁ!!」


いや時間とかそれ以前に聞きたいことは山ほどあるんだけど、ひとまず起こさないと。予定に厳しいレイちゃんにはこれが有効なはず。たぶん。


「ん……んー、なに……。」


「なにじゃなくて、時間! あんた今日打ち合わせでしょ!」


「んぁ……、んん…………。」


なんとか身体を起こそうとベッドの上でうずくまり、ようやく頭を上げて、こっちを見た。


「おはよ、レイちゃん。」


「…………ん。」


「とりあえず、朝ごはん用意してくるね。」


レイちゃんは、寝起きはだれとも話したくないタイプだから、もう少し意識がしっかりしてから話そう。


それから朝ごはんを食べて、2人で着替え始めた。このタイミングなら聞けるかもしんない。


「ねぇ、レイちゃん——」


何の気なしに振り向いて、言葉が止まる。そこには少し筋肉質で、引き締まったレイちゃんの身体があった。


「んー? なぁにリオちゃん。」


「や……あんたそんな綺麗な身体してたっけ?」


「は?ww」


「いやなんつーか、引きこもりにしては引き締まってんなって。」


「まぁ筋トレはね! してるからね。」


「……レイちゃん運動好きだった?」


「えっなに言ってんの?」


「え?」


「わたしいつも家で筋トレしてるじゃん。昔から運動好きだったってのもあるけろ、やっぱ引きこもりにはねぇ、筋トレは必須だからね!」


「そっ……かぁ。」


そんなに筋トレしてたっけ。


「てかリオちゃん時間! くっちゃべってる暇ないよ!」


「あ!」


そこからはバタバタしちゃって、出かける準備が終わるまで全然話せないまま、出かけることになった。

いつも通り、髪をツインテールに結ぼうとする。


「リオちゃん髪結ぶの?」


「えっ……。」


「昨日からさぁ、髪下ろして活動するって話じゃなかった?」


どういうこと……?


「あの、さ、レイちゃん、昨日って……。」


「? どうしたの? なんかまた顔色悪いけど。」


また? また、ってなんだ。最近いつ顔色悪かった?


「昨日もさ、ぴょこぴょこがどうとか言ってて、おかしかったし。……あんた最近だいじょうぶ?」


ぴょこぴょこがどうとか、って、あれ? それ私夢の中で、


「動画アップしたあと、エゴサもせずすぐ寝ちゃったし。」


動画……、昨日上げたっけ……。


「さっきもさぁ、なんか変で……リオちゃん?」


あれ、全部夢じゃなかったってこと?


「……や、なんでも、ない。行こ。」


これって、夢の中だと思ってた話と、繋がってる……? いや違う、夢の中ではレイちゃんの髪は長くなかった。じゃあなんで?


「レイちゃんさぁ……いつからそんな髪長かったっけ?」


「え? ……やっぱさぁ、リオちゃん今日も寝てたら?」


「なんで?」


「わたしさぁ、髪短くしたことなんて1回もないけど。」


なんてことだ。びっくりして、なぜか視界がぐらぐらして、冷や汗をかく。なんか、なんかおかしい。倒れそうになって、レイちゃんに支えてもらった。


「ちょ、あっぶな!」


声も、喋り方も、レイちゃんだ。レイちゃんなのに。なんで知らない人の香りがするんだろう。私を軽く抱きとめた身体は、細いながらもしっかりと筋肉がついている。

長い髪が、視界をかすめる。レイちゃんが、リオちゃんとかだいじょうぶとか声をかけてくれてる気がする。

じゃあ、この人は、だれ?


たぶん、こんな状態じゃ仕事にならないって思われたんだろう。ほんとに寝かせられることになった。


「今日は体調不良で行けないって連絡しといたから、リオちゃんは寝てて。最近忙しくて疲れてるのかもしれないし。わたし1人でだいじょうぶだから。」


いつも通り、心配してくれて、仕事もきちんとこなしてくれる。レイちゃん……。


「うん、ありがとぉ……。」


納得出来ないけれど、自分を信じることも出来ない。不安が消えないまま、ベッドの上で、いつもと違う後ろ姿を見送った。残った香りは、やっぱり知らない人の香りだった。


っていっても、全然眠れない。ぜーんぜん。一切眠気が来ない。

あの人は本当にだれなんだろ。レイちゃん? それとも別のだれか?

このままぐるぐる悩んでても仕方がないし、ちょっとゆっくりお風呂にでも入ろうかな。あの人には悪いけど。


浅い湯船に湯だめをして、シャワーを浴びる。シャンプーの置いてあるところを見ると、馬油じゃない、なんかオシャレなやつが置いてあった。香りの原因、これ?


「……良い香り。」


自分の身体を見回してみても、どこも変わってない。手も、肌も、髪も。全身に触れてみる。見えない下も上も、きっと背中も、どこも変わってない。レイちゃんだけが変わっていく。

なんで……? どっちが夢なんだろう? これでまた寝て起きたら、どっちのレイちゃんがいるんだろう。どっちが、本当のレイちゃんなんだろう?

ぼんやりと湯船に浸かる。揺れる水面に映る自分の顔が一瞬別人に見えて、目を疑った。言いようのない恐怖をかき消すために、ザバッと音を立てて顔にお湯をぶっかける。


風呂から上がって着替えて、ベッドに倒れこんだ。次に会うのは、だぁれ? 不安と寂しさでどうにかなってしまいそうだ。

レイちゃんに会いたい。レイちゃん……。

 

 

 

いつのまにか寝ていた。8:15。時計には、アラームが8:20にセットしてあるってマークと、upd8の人と打ち合わせをするはずの日付が表示されている。


ベッドでゴロゴロしながら、何か大切なことを思い出そうとしていたら、ふと頭の上に影が落ちてきた。見上げると、レイちゃんが微笑みながら立っている。


「レイ……ちゃん。」


見た目はいつものレイちゃんだ。頭にぴょこぴょこがついていて、髪も短い。へんな良い香りもしない。


「リオちゃん、おはよ。」


ニッコリと笑って、私を見つめる。


「……うん。」


嫌な夢を見ていたのかもしれない。ずっと。レイちゃんはベッドの上に座って、私の手を取る。

ふにふにした手。とても筋肉質とは思えない。あぁ、レイちゃんだ。この人は、レイちゃんだ。


「レイちゃん……!」


思わず、私の方からレイちゃんを抱きしめた。


「どした? リオちゃん。怖い夢でも見たの?」


優しい声。柔らかくて温かい。匂いも、触れた心地も、全部、全部全部レイちゃんだ。


「レイちゃん、レイちゃん、……レイちゃん!」


質問に答えることなく、ひたすらに名前を呼び続ける。レイちゃんの胸元で、私の影だったものが揺れる。

こんなの、レイちゃんも困るに決まってる。それでも手が離れてくれなくて、名前を呼び続けることしか出来ない。そうしないと、目の前のこの人が、どっか行っちゃうんじゃないかって思って。

……いや、たぶん、そーじゃない。ほんとはどっかで分かってる。


「レイちゃん、レイちゃ、」


「リオちゃん、」


顔を上げて、私の目を見つめてくる。優しい目だ。今まできっと見たことがないくらい。


「怖かったねぇ。でもねぇもうだいじょうぶだから。レイがいるよ。」


初めて聞いた声。いつもより、ずっとずっと優しい声。これは——


「ずっと側にいる。リオちゃんを怖がらせるものは全部レイが遠ざけてあげるし、だから……今日の打ち合わせもやめよ? バーチャルYouTuberも、全部やめよ? リオちゃんは、なんっにもしなくてだいじょうぶ。」

「リオちゃんの好きなことしよ? これからは何でも言うこと聞いてあげるね。どうする? ゲームする? 一緒にさぁリオちゃんの好きなアニメ見よっか。」


これはレイちゃんじゃない。この人は、絶対にレイちゃんじゃない。

レイちゃんから、バーチャルYouTuberをやめようなんて言葉、聞きたくない。レイちゃんはそんなこと言わない。私の言うことを全部聞くなんてこと絶対ないし、打ち合わせの約束をすっぽかすなんてことも絶対にしない。

自分の趣味をほっぽり出すなんてこともしない。レイちゃんはいつでも私を振り回して、私はそれを見ているのが楽しくて……


「大好きだよ、リオちゃ——」


気がついたら、今までしがみついていた手を突き放していた。そのまま、コートをひっつかんで家を飛び出す。

 

「リオちゃん!?」


あれはぜってぇレイちゃんじゃねぇ。

レイちゃんを探さないと。


近所のガンプラ屋、おもちゃ屋、コンビニ、いそうなところを全部当たっていく。

そもそもこれは夢かもしんない。この世界にはいないかもしんない、でもとにかく、どこでもいいから探さなきゃ——

あっ、と1つ気付いた。そっか。「この世界には」いないかもしんないけど……イチかバチか、やろう。やってみよう。


「おめシスは、いいぞ。おめシスはいいぞ。おめシスはいいぞ。」


ふわ、と目の前が真っ白になって、次の瞬間には地面に足がついてた。だんだん、人の声や車の音が聞こえてくる。ここはどこ?

雨が降ってたみたいで、湿った匂いがする。キョロキョロと見回してみると、頭の上にかっぱ寿司の看板があった。レイちゃんと最後に行ったリアルワールド。

まだ開店前みたいで、中を覗いてみたけど、誰もいない。ここはハズレかなぁ。


移動しよう、と思ったら大きな水たまりを踏みそうになった。反射して映る自分はまだ、不安そうな顔をしてる。

ほっぺたを両手でパチパチと叩いて、ふぅっと一息つく。


「おめシスはいいぞ、おめシスはいいぞ……。」


焼肉安安。初めて来たリアルワールド。店内を覗いて見たけど、やっぱここにもいない。

映画館……バーチャルの未来が、とかってここで撮ったあと語ったっけ。

原宿でJKにインタビューしたときはまだちょっと慣れなかったけど、バーチャルYouTuber知名度めっちゃあるなって思った。いつか私たちの名前も呼ばれるようになるといいなって。

歩きながら、自転車が横を通りすぎて、私を追い越していく。


横浜産貿ホールでYOUに夢中のイベントに来て、自分たちが表紙の本買ったときはほんとに嬉しくて。

でろーんと一緒に行ったくら寿司、あいつ「ホーント、2人ともそっくりやなぁ!」みたいなこと言ってた気がする。そんなに似てるかなぁ。

ガラス窓にはさっきよりよっぽどマシな顔が映っていた。よし。


コミケ会場でアイちゃんの本買って、upd8に届けて……そっかあの頃にはもうとっくにupd8入ってたっけ。あのへんの時期、レイちゃんともすっごい色々あって、バタバタしてたなぁ。

あおガルの接待の中華料理店、激辛麻婆豆腐めっちゃ美味かったアレ。「ちゃんと話聞きな!」って怒られたけど。

秋フェスのソフマップ、バッティングセンター、看板のあった秋葉原ツクモ交差点 ——今はときのそらちゃんの看板だ。


バーチャルの方も、色々探した。歌動画を撮ったバーチャル空間を飛び回った。でも、青いベンチにも、ガンダムの浮く空間にも、真理の扉開けたとこにも、どこにもいない。

おめが商店の前、モンスターの手のひらの上、燃える森の中、ネオンが輝く鉄骨みたいなとこ……魔女の目の前、赤い幕をかき分けた奥、あおガルのもう使われていないステージ、それからそれから……。

コントで使ったPUBGの空間も、N○Kの回転ドアの向こうも。そして……あんまり思い出したくもない、Count0のステージの上も。


「ここで、10万人達成したんだよなぁ……。」


バーチャルなステージの上に座って、会場全体を眺める。あの日と同じ、がらんどうだ。

レイちゃんはすっごい緊張してて、入念にスタッフと打ち合わせして。いざってなったらVRライブは中止、誰もお客さんのいない中喋らなきゃなんなくて。まぁ? しゃべることに関してはもうプロだから? 何とかやりきったけど? 二度とやりたくねぇな。

他にも色々あって、そんな中で10万人までいった。私は「見えないけど見てくれてる人がいるんだ!」って思った。でもレイちゃんはさぁ、違ったよね。


オリジナル曲のMVを撮る予定の空間は全部、ロックのかかったフォルダに入ってた。レイちゃん、まだ作りこみたいって言ってたっけ。入れなさそうかな。

いつも動画を撮っている、バーチャル空間の部屋に入る。真っ白で、赤と青の背景がそこに置いてある。

私たちは全然違う、正反対なところもある。そんで、どんどん変わってく。バーチャルだけど、みんなと同じ時間の中で生きてんだよな。

それでも……軸だけは変わっちゃダメだ。譲れないことだけは大事にしなきゃ。そのためなら、なにが変わってもいい。ここがきっと、カードの表と裏で、私たちの全部なんだ。


「おめシスはいいぞ、おめシスは……。」


目を開けると、ランニングで来てた公園にいた。レイちゃんとケンカした日に座り込んで、寝ちゃったベンチ。3月といってもやっぱりさんむい。身体の芯まで冷えてるなぁ。

えーっと、時計時計……あった。コートのポッケに入れっぱのやつ。日付はケンカした日の次の日になってる。しかも、もう朝じゃん。8:50じゃん。

てことは、今までのは、みーんな夢だったってこと……?

うずくまってた身体を起こして、手鏡を覗いてみると、自分が泣いてたってことに気づいた。

目元をぬぐおうと手をあげて、その手をガッシリと掴まれる。だれ!?


「っはぁ、はぁ、あんた、あんたねぇ……!」


赤いぴょこぴょこ。青のショートヘアで、この寒いのに汗だくになってこっちを睨んでいる。えっ、レイちゃ


「っバカ!!!!!」


クッッッッソデカい声で怒鳴られた。レイちゃんだ。間違いなく。


「も、バカ!! ホンット、はぁ、ゲホッゲホゲホ、どこいったかと思、ゲホッ……、はぁーっ……。」


レイちゃんは怒りながら、私の目を乱暴にぬぐう。


「レイちゃん、大丈夫……?」


咳き込むレイちゃんの背中をさすると、そのままこっちにもたれかかってくる。汗かいてるけど、いつものレイちゃんの匂いがする。


「ひょっとして、一晩中探してくれてた?」


「や、ゲホッ、すぐ、帰ってくるでしょ、て、思ってたんだけど、さぁ、はぁ、ぜーんぜん帰ってこないから、朝まで、どこいんのかと、思っ、て、」


息を整えながら一生懸命しゃべるレイちゃんを、さすりながら支える。


「ふぅー……。リオちゃんさぁ、また風邪引くじゃん、こんなとこで寝たらさぁ。」


レイちゃん、レイちゃんだ。

運動不足で引きこもりで、怒るときは声でっかくて、ちょっとドライで、でも私のことを一番分かってくれて、思ってくれて、


「ほら、早く帰るよ!」


いつでも私の隣を歩いてくれる。いつものレイちゃん。


風を感じる。朝一番の風だ。春に向けて少し暖かく、優しい風。いちおー、出るときにコートはかっぱらってきたけど、やっぱり身体が冷えきってて寒い。耐えきれなくて、ちょっとイタズラのつもりで、レイちゃんの首もとに手を差し込む。


「ひゃ!? ちょっと何すんのあんた!」


振り払われた。当たり前だけど。


「えー、いいじゃん。外さぁ寒かったからさぁ~。」


「自業自得じゃんそんなの!」


そう言ったあと、振り払われた手をぎゅっと握られた。


「手繋いで帰んの?」


「手繋いで帰んの!」


照れ隠しみたいにして、レイちゃんは同じ言葉を繰り返す。


「レイちゃん。」


「なぁに、リオちゃん。」


「手、さぁ、あったかいね。」


「いや、結構冷えてんじゃん。」


「んーん、あったかい。」


「……んー……。」


「あのさぁ、レイちゃん。」


「はぁい。」


「ごめんねぇ。」


「……いーよ、もう。」


今回のは、きっかけはちょっとした行き違いだったけど、……変わってっちゃうレイちゃんを見て、寂しかったのかもしんない。そんなことを考えながら、ゆっくり2人で歩いて帰った。

 

あとがきと人生。

 

こんにちは。ゼロサンです。

SS書きあがりました。色々な方が続きを待っててくださって、非常に有難いと同時に、お待たせして申し訳ない気持ちでいっぱいです。

加えて、一個人の妄想SSにしては、多くの方からご協力をいただくこととなりました。本当にありがとうございます。

 

今回は、3作目にしてあとがきを書きます。あとがき、だなんて偉そうだなと自分でも思いつつ、どうしても書きたいことがあるのです。

いつもツイートで書いてしまいますが、鬱陶しいことになっているので、読みたい人だけ読める用にブログに洗いざらい吐いておきます。

 

あとがきの構成は以下のようにいたします。

・今回(3作目)、えがかなかったこと。

・今回、えがいたこと。

----------------

・余談。

以上、よろしくお願いいたします。

 

えがかなかったこと

まずはこちら、えがかなかったことから。

 

いつも、おめシスのSSを書くにあたって、必ず意識していることが2つあります。

 

①テーマの中でKizunaAIさんを登場させること。

②すべてのリオちゃんに「レイちゃんと楽しく過ごしたい」という思いが遺伝子レベルで刻まれていること。

(そしてすべてのレイちゃんに「リオちゃんには自由に楽しく過ごしてほしい」という思いが遺伝子レベルで刻まれていること。)

 

今回、①は えがきませんでした。

これまでであれば、1作目の『「おめがシスターズ」になる日。』では「KizunaAIさんはαだから、私たちはΩでいこう」というふうにKizunaAIさんを登場させています。

そして2作目『リオちゃんが過去の自分に電話する話。』では、KizunaAIさんの楽曲の歌詞を引用し、またはそれ自体をテーマとし、一部アンチテーゼとしながらえがいています。

(KizunaAIさんの楽曲はすべてエモーショナルで良いものなので聴いてください。)

例えば、本文中の「ほんの少し顔を上げてみる」は、そのままKizunaAIさんの『future base』の歌詞から引用しています。

また、KizunaAIさんが楽曲中で「ひとり」を歌うことへのある種のアンチテーゼとして(アンチテーゼは対立概念という意味であり、反抗的なニュアンスを示す「アンチ」とは違います)、リオちゃんが帰り道で歌う曲では、おめシスが歌った『ニブンノイチ』の歌詞を引用しています。

どちらが良いとかではなく、在り方の違いをえがきたかったんです。

これは、おめシスがKizunaAIさんをリスペクトしており、また姿勢に関して意識している部分があることを鑑みた、俺なりの「リスペクトに対するリスペクト」です。

更に言えば、いつもKizunaAIさんについて上手く言葉に出来ない部分を補うために、「おめシスを通じてKizunaAIさんを描いている」という要素もあります。

 

今回、おめシスを通じてKizunaAIさんをえがかなかった理由は、この3作目があまりにも個人的な解決のために書かれたものだったからです。

初めは「好きなことで生きていく。」の姿勢について、KizunaAIさんとの対比を行ないながらえがいていこうとも思っていました。

しかし、今回のSSを書いている間に、自分の中で少し衝撃的な気付きがあり、それゆえに続きが書けなくなってしまいました。そして、書けないなら、その気付きごと全部SSに投げ込んでしまえということで、KizunaAIさんについてえがくことをやめました。

KizunaAIさんに関しては、同様の形で別の衝撃的な気付きをしていたため、織り交ぜてえがくことがとても難しいと感じましたし、推しを2組も巻き込むわけにはいかなかったからです。

 

今回①をえがかなかったのは、そういうわけでした。

 

えがいたこと

一方で、②及び関連事項に関しては、かなり大々的にえがいたかなと思います。あるいは、過剰なくらいにというほうが適切でしょうか。

 

俺の書くSSではリオちゃんが主役になることが多いので、いつもハッキリと文章にしています。

1作目では「ぶっちゃけ私は……(中略)レイちゃんと、2人で楽しいことが出来れば、何だっていい。」といった形、2作目では「楽しいことがしたい。レイちゃんと、久々にゲームがしたいなぁ。」といった形でえがかれます。

今回の3作目も、クライマックスシーンで「レイちゃんとさ、楽しいこといーっぱいできたらなって、思ってるよ。」という台詞が登場します。

ここに関しては、ぶっちゃけただの妄想で願望です。何も目的はなく、ただそうあってほしいと願って書いているだけ。

 

そして、おめシスの関係性を完成させるためには、②の()内が効いてきます。

レイちゃんは以前、『のばん組』にて、「生まれ変わったらリオちゃんになりたい」と言っていました。

あんまり記憶にありませんが、確か「楽しそうだから」のような理由だったと記憶しています(間違っていたらすみません)。

羨んでいるというか呆れているというか……ともかく、リオちゃんがそうであることを少しでも「いいなぁ」と思っているのであれば、きっと「リオちゃんにはそうであってほしい」と思っているのだろうなと。

一種の願望投影と言いますか。

この辺りは薄ぼんやりと思っており、密かに意識していたことでもありましたが、相互さんとのリプの中でハッキリと言語化出来るようになりました。

 

レイちゃんは、リオちゃんに楽しくあってほしい。リオちゃんは、レイちゃんと楽しいことがしたい。

すなわち、2人ともが一緒に楽しくやりたいように過ごしていれば、どちらの願望も叶うことになる。※片方は俺の妄想です

そうすることで、関係性が完成するようになっています。

少なくとも、これまではそのようにえがいていました。

(現実のおめシスがそのようにして関係性を完成させているのではなく、あくまで、俺がSSを書く上ではそのように関係性を完成させているということです。)

過去に電話するやつとか、「タイムテレフォン」とかいうこの世の法則を無視したものを自作してまで当時のリオちゃんを救おうとするレイちゃんは、ひょっとしたら一歩間違えればかなりヤンデレかもしれない。くらい、過去のリオちゃんを不自由な生活から解放したかったんだろうと。

 

加えてリオちゃんは、質問箱にて「レイちゃんの好きなところを3つ挙げて」と言われたときに、以下を挙げていました。

⒈頼りになるところ

⒉好きなことには全力なところ

⒊なんだかんだリオのこと大好きなところ

すべて尊い答えの中で、特に今回は⒉に注目してえがきました。

つまりリオちゃんは、好きなことを全力でやっているレイちゃんが好きだから、レイちゃんには好きなことをしていてほしいのではないかと。

リオちゃんがいつもレイちゃんのガンダム遊戯王の話を聞き、趣味に付き合っているのも、この⒉が理由だと考えれば妥当性があります。

 

なので、今回は②も えがきましたが、それだけではなく、②’とでも言いましょうか、とにかく少し違うことも混ぜてみました。

レイちゃんと楽しいことがしたいだけでなく、レイちゃんに好きなことをしてほしいリオちゃん。そしてリオちゃんには自由で楽しくいてほしいレイちゃん。

これらの思いをえがくことで、2人の関係性を表現出来たらと考えていました。

 

あくまで、したかったことです。実際にえがけていたのかは、読んでいる方次第ですし、自分にそこまでの技量があるとまでは思えません。

というか……このあとがき、SS本文を書く前に書いちゃったんですが、紙面(紙じゃないな、液晶面?)の都合上その辺を強調して書けていない気がします。無念。

 

まあ、あとはクライマックスシーンのイケメンリオちゃんが書きたかっただけです。はい。

リオちゃんはファンからリプで「泣いた」って来ると、必ず「泣かないで」って言ってくれるんです。それはファンが手の届かない存在だからで。自分の手の届く姉だけは、甘やかしたいんじゃないかと思って、「泣いてていいよ。」って言わせました。

 

あっ、忘れるところだったんで追記!

リオちゃんが『シルエット』を歌っているシーンについて。

『シルエット』は、おめシスの削除された歌動画の1つであり、当時はリオちゃんの最新のソロカバーでした。

まだ当時は今ほどおめがっていなかった俺でも、この『シルエット』のリオちゃんの格好良さに打ちひしがれ、『青いベンチ』とともに惚れ込んで何度も聴いた覚えがあります。削除となったときはとても悲しかった。

作中でリオちゃんは、「覚えてないこともたくさんあったけど」の部分を歌っています。

この意味について、俺の拙いSSでの表現ではなかなか伝わらないと思うので、稚拙ですがどうか補足させてください。

 

『シルエット』は、1番2番のサビの最初とラスサビ(大サビ)の最初が若干異なっています。

1番2番は「覚えてないこともたくさんあった『だろう』」です。そして、リオちゃんが作中で歌っていたのは「覚えてないこともたくさんあった『けど』」、つまり大サビです。

 

大サビはこのあと、

「きっとずっと変わらないものがあることを / 教えてくれたあなたは消えぬ消えぬシルエット / 大事にしたいもの持って大人になるんだ / そんな時も離さずに守り続けよう / ……」

と続くわけです。

 

レイちゃんの地の文で説明されている通り、作中のリオちゃんはこの大サビまでを鼻歌で歌い、大サビから最後までをきちんと歌います。

 

本当は歌詞ぜんぶ書きたかったけど、それはさすがに長さ的によろしくない。

重要なのは、リオちゃんが大サビをすべて歌ったことです。

それが、リオちゃんがレイちゃんを想う気持ちを象徴している、という表現のつもりでした。

双子だから、影のように側にいて、対等に、鏡写しに在り続ける。

 

もう一個言うなら、名前の呼び方ですが、これはもう好きに解釈してください。この部分は、他の言葉に変換出来ないです。

幼い頃は一人称自分の名前だったとか。レイちゃんはリオちゃんの名前を呼び捨てにしてたとか。その辺。

 

 

今回のあとがきとしては、このくらいでしょうか。

SS及びあとがきのご高覧、またこれまでのご協力につきましても、本当に本当にありがとうございました!

それでは。

 

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余談

余談に移ります。ヘドロみたいなものなので、目を通さなくて構いません。

今回のSSを書くにあたって、苦しんだこと。

 

まず自分語り失礼いたします。そこが気付きの起点なので。

 

唐突ですが、俺は家族に関してあまりいい思い出がありません。

特に親。そして、きょうだい。

 

小さな頃から、俺の親は基本は放任主義でした。褒めてくれない。代わりに、テストの点などの外部評価では叱らない。

しかし、細かい日常的なところは怒ります。寝るのが遅いとか、食べるときに噛んでないんじゃないかとか。

そして更に、過保護です。門限もある程度あるし、深夜に出掛けてはいけない。アルバイトもつい最近まで禁止されていました。また、財布の中身にまで口を出します。

矛盾しているように聞こえるかもしれません。放任主義と過保護は対義語です。

でも、極端なものって逆に似ているとは思いませんか?

 

前にも言いましたが、俺のこの状況を見て、多くの人は「羨ましい」「愛されている」と言います。

基本的に放任主義なぶん自由度が高く、その上で心配されているから、と。

 

でもそうじゃない。

この親は、俺を見ているわけでもなければ、信頼してくれているわけでもない。いつまでも「子どもだから、自分がどうにかしなきゃ」と思っているだけ、親という権威性に甘えたいだけでした。

 

ずっとこれがしんどかった。

こんなものを「愛」と呼ばれて肯定されることが、たまらなかった。

自分が「親」でいるために俺を否定していたくて、本当には俺を見てくれていないことがつらかった。

いつまでも1人の人間としては見られない気がしました。

 

加えて、奔放な姉と怠惰な兄を見ていたので、「いい子でいなきゃ」という気持ちを抱えながら思春期を過ごしました。

反抗期に反抗したくても抑え込んでいたせいか、自我を上手く作り上げることが出来なかった。

陳腐でありふれた話だけれど、そのせいで歪んだのも確かです。

 

姉は俺をつまらない人間だと思って見放したし、兄は俺を延々と話を聞き続けるロボットみたいに扱いました。癒着というか、依存というか。

家族に関しては、そんな感じです。

 

自分を見てもらえない。見てもらえるような「自分」を作ることが出来ない。

認めてもらえない。褒めてもらえない。

好きなことが出来ない、のみならず、自分の好きなものが分からない。

ここまで見ても、やっぱり笑っちゃうくらい陳腐ですよね。バカみたいに。

どこにでもある話です。

 

それから。

俺は幼い頃イタズラ好きだったので、どっか行かないように手は繋いでもらってましたが、それ以外での触れ合いはあまりありませんでした。

上2人が大変すぎて、親も末っ子を構っている余裕なんてなかったんでしょう。

 

恥ずかしながら、自分の中に、未だにその頃の小さな子どもがいます。

綺麗なニュアンスで受け取られると不本意なので、一応言っておくと、「子どもは純粋無垢だ」なんて言説には反対です。

子どもとして救い出されたいと願うような、この胸の内に巣食う気持ち悪さを吸い出して欲しいと思っています。

 

象徴的なこととして。

さっき書いたような「よく噛んで食べなさい」「早く寝なさい」とかは、今でも言われるんです。

情けないことに、そう言われると泣きたくなって、怒りに震えてしまう。

 

めちゃくちゃよく噛んでるよ。見てもいないのに好き勝手言いやがって。頑張ったって信頼してくれないのに偉そうなことを言うな。早く寝ろって、俺の身体なんだから自由にさせろよ。人のことコントロールしたいんだろ。

怒らないで。

 

キッツイですよね。もう二十代も半ばですよ。

たぶん、一番見てほしい人に見てもらえず、一番認めてほしい人に否定ばかりされてきた結果なんでしょうね。

 

さて、長々と前置きをしてしまいましたが、ここから余談の本題です。

最近気付いたこと。

 

おめシスって、自分が家族に求めていたものの完成形なんじゃないか、と最近思ったんですよ。親でもきょうだいでも何でもいいから、レイちゃんやリオちゃんのような存在が欲しかったって。

 

誰よりも側にいて、お互い思いやり、好きでいながらも、「個」として尊重して、癒着せず、好きなことは好きと言い、いらないものはいらないと言い、お互いをよく見ていて、分かり合える。

お互いのことは否定しない。やりたいことを肯定し認め合える。

時にはケンカもするけど、きちんと仲直りできる。

 

そういう最高の関係性は、Vの者たちにも何人か見られますが、中でも、俺が欲しいと思っていた関係性に一番近いのがおめシスでした。

 

だから、今回のSSでも存分に書き殴ってます。

好きなことを好きなだけしてほしいと願うリオちゃんも、自由に楽しんでほしいと願うレイちゃんも、俺の中にいる子どもに手を差し伸べてくれる存在として。

お互いを思うあまり、対等にケンカして、素直になって、仲直りする。そういう、本当のきょうだいみたいな……。

推しをこういう風に使うことが不毛なのは重々承知の上で、理想がそこにあるなら書かずにはいられなかった。

人にとってはただ多少てぇてぇ日常風景にしか見えないようにも思いますが、その日常が欲しかったんですよ。

 

だけど喉から手が出るほど欲しいと思ってるのは今の俺じゃなくて、子どもの頃の俺で、過去の話。

つまりはまあ、二度と手に入らない、創作の中でしか求められないものだ。と、思って書きました。

 

人は、思春期に手に入らなかったものを一生追い求めるなんてツイートを先日見ましたが、俺にとってはこれがそうなんでしょう。

アイちゃんのときにも言ってた、「気持ち悪くて触りたくもないけど、喉から手が出るほど欲しいもの」。

 

からしんどかった。理想をえがけば救われるなんてこともなかったし。

マジで体調に影響出るくらい精神の具合が悪くなって、でもこれ書き終えなきゃ自分はどうにもならないなって。

 

そんなわけでした。めっちゃ「具合悪い」言いまくってて申し訳ない。

 

こんな気色悪い文章を、最後までお読みくださってありがとうございます。

ぐちゃぐちゃした文章の中に「おめシス」って出て来ると、なんか爽やかでシュールですね。

それでは。

リオちゃんが仕事を辞める話。

 

「うー……もちょもちょ…………うんち……。」


リオちゃんの寝言が聞こえる。なんてことだ。寝言でまで「うんち」とか言うのかこの妹は。

日が完全に出てきた。今、5時半すぎくらいかな? もう6月だし、日がのぼるの早くなったなぁ。きのうの夜から仕事してたから疲れちゃった。

アラームが鳴る。今日リオちゃん早いんだっけ。もぞもぞ、と動く音がする。


「ぅん……? あー……やっべっぞ……。」


リオちゃんがベッドからむくりと身体を起こして、寝起きのかすれた声でつぶやく。


「どした?」


「今日朝礼あるじゃん。いまなんじ?」


「5時40分。」


いつも「明日早い」って言うときこの時間だから、アラーム早めておいたんだけど。これより早いってなったらしらない。


「んーーーーーっ……、」


リオちゃんは大きく伸びをして、こっちに向きなおる。そうして、


「ごじ よんじゅっぷん? ありがとぉ。」


いつもみたいに、ヘラっと笑ってみせた。


こうして寝起きだけはいい妹を毎朝起こして、送りだす。それがわたしたちの、朝の習慣になっている。


「レイちゃん、行ってきまぁす!」


「ん。」


朝から元気だなぁリオちゃん。どこからあんな元気が出るんだろ。

さて、無事に送りだしたことだし、エゴサして、いまから寝るかぁ。

 

 

 

 

「ねぇレイちゃん、あなたお姉ちゃんでしょう?」


わたしを叱る声が聞こえる。


「うん……。」


「お姉ちゃんは、しっかりしなきゃダメ。」


理不尽だ。生まれるのが数分早かっただけなのに。


「だから、そんな男の子みたいなオモチャで遊んじゃいけません。」


なんで? わたしは……レイは、すきなもので、あそびたいだけなのに。


でも、そっか。おねえちゃんは、そんなこといっちゃ、いけないんだ。


「レイちゃんが あそばないなら、リオにちょーらい!」


「リオちゃんは……まぁ仕方ないかなぁ。はい。」


「やったぁ! リオの〜!」


どぉして? レイのなのに。リオはどぉしていいの?


がまんしなきゃ。リオが、いもうとが、ほしいっていってるんだから。


「レイちゃん、おかーさん、いっちゃったねぇ。はい!」


リオがかえしてくれた。


「リオはねぇ、レイちゃんと あそんでるのが、いちばんすき! レイちゃんが、たのしそーに おはなししてるの みるの うれしいもん!」


リオ、……リオちゃん。

 

 

 

 

——よく寝た。なんか懐かしい夢を見た気がする。あんまり覚えてないけど。

もともと寝起きがよくないのもあって、頭がぼんやりしている。もうちょっと……寝…………。


電話が鳴った。リオちゃんだ。

毎日、わたしが起きたかどうか確認するために、昼休みに電話をかけてくれる。


「レイちゃ、起きた?」


「うー……。」


「レイちゃーーーん、起きてーーー」


「うるさ……。」


思わず文句を言う。


「レイちゃん、もう昼! 昼だよ! 起きて、起きて! 起きるんだレイ!!」


「んんっ……! 起っ……き、る!!」


あまりのしつこさに電話を切ろうかと思いつつ起きた。昔から、この妹は元気で、おせっかいだ。


「はーい、おはよー、レイちゃん。」


「………………。」


リオちゃんと違って、寝起きはだれとも話す気にならない。そのことを向こうもよく分かっているからか、そのまま「お疲れさま。じゃあ切るね!」と言って電話を切られた。


お昼。またそのまま寝そうになったけど、エゴサして、冷蔵庫のお弁当をチンして食べて、また作業を再開する。

あ、upd8からメール来てたから返信しとこっと。本業のほうも依頼来てたっけ? あとは休憩がてら動画のネタ探ししてぇ、やるって決まったネタの台本書くでしょー。で、エゴサしてー、昨日のやつの編集も手直しもするでしょー、それからー……。


ピコン!


リオちゃんから、そろそろ帰ることを伝えるLIN○が来て、もう夕方だと気付いた。

夕飯は基本的に一緒に食べることになってる。作業にキリつけて待つかぁ。


あ、積みゲー。1ヶ月も積んでるから今日こそやろうって思ってたのに……まぁ、いっか。

最近全然リオちゃんとも遊んでない気がする。お互い忙しくなったもんなぁ。

 

 

 


リビングで風呂上がりのカルピスを飲んでたら、玄関から音がした。


「たらいまぁ。」


「んー。」


「お、レイちゃんリビングいんのめずらしー。」


「ちょうど風呂上がって……ってリオちゃん、手洗ったら拭いてってば。」


「はぁーい。」


他愛のないやり取りをしながら、2人でリビングのソファに座る。


「今日なに買ったの?」


リオちゃんが買ってきた、セブン○レブンの袋を指差す。今日はねぇ、わたしはラーメンの気分なんだよなぁ。


「なんとなく今日はラーメンの気分かなって。」


こういうときだけ、双子だなぁと感じる。

温めて、それぞれに食べ始める。うま。さすがセ○ン。


「レイちゃんさ、」


一味のキャップに苦戦しながら、リオちゃんが喋り始めた。


「私がさぁ、仕事辞めるって言ったらどうする?」


一瞬、耳を疑う。好きで就いた仕事なのに、辞める、って……


「なんで? 辞めるの?」


疑問が口を突いた。ようやくキャップを外せたリオちゃんは、ラーメンに一味をかけてから、一旦その手を止める。


「んー、うん。YouTubeも収益化条件とっくにそろってんじゃん? だから収益化したら辞めよっかなって。」


様子をうかがうようにこちらをチラッと見られた。


YouTubeから連絡が来ないとなんともなぁ。」


「でもなぁレイちゃん、会社は急には辞められないんや! upd8にも入って、さすがにさぁ忙しくなってきたし、収益化したらもっと忙しくなるでしょ?」


「でもさぁ……、」


煮え切らない気持ちがもたげる。

将来的なことを考えたら、リオちゃんが言っていることは正しい。でも……、

お金のこと。編集技術のこと。そして何より、好きで始めた仕事をリオちゃんが辞めると言っていること。


「私がレイちゃんの手伝いすればさ、動画もいっぱい上げれるし、お金も入ることない?」


「リオちゃんに手伝ってもらってもなぁ……。」


つい、意地の悪い言い方をしてしまう。ケンカになることは分かってるのに。


「なぁにそれ。少しでもさぁ、楽になればいいじゃん!」


「リオちゃんが手伝わなくてもさぁ、わたし1人でもさぁ全然出来るし!」


「そうかもしれないけど、レイちゃん最近全然好きなこと出来てないじゃん!」


「……っ!」


意外なことを言われてびっくりしてしまい、口をつぐむ。

リオちゃんは、言葉を選びながら、ぽつりぽつりと続きを話し始めた。


「……今日から、私もがんばるからさぁ。」

「今はバーチャルYouTuberが一番楽しいなって思うけど、それもレイちゃんがいないとやってこれなかったじゃん。」

「だからさぁレイちゃんにもさ、好きなことしててほしいんだ。」


そう言ってヘラっと笑う顔を見て、


「好きなこと話してるレイちゃんがさ、私、一番大好きなんだよねぇ。」


なんとなく、なぜか思い出せないけど、懐かしい気持ちになった。

 

 

 

 

収益化のメドもついて、レイちゃんから仕事を辞める許可をもらってから、できるだけ動画に参加しようと思っていろいろやっていた。

仕事の合間にネタ探ししたり、バーチャルYouTuber関連のメールの返事をしたり。

編集も独学でやろっかなって本買ったけど、それはよくわかんなくて放置してる。レイちゃんも「仕事辞めたらでいいよ」って言ってたしなぁ。でもホントにいいのかなぁ……。


企画会議にも色々出したけど、結局ほとんどボツ。唯一、P.T.だけは私の希望で押し切った。やってみたかったんだよねぇ、ホラー。


そうこうしているうちに、7月3日。ついにYouTubeから収益化の連絡が来た。マネー! マネーェェェ!!

ごちそう頼んだり、好きなものを買いに行ったりとぜいたくに1日を……あ。大事なこと忘れてた。


「レイちゃん、レイちゃん。」


こういうことはレイちゃんに聞くのが一番だ。


「なぁにリオちゃん。」


「仕事辞める言い訳どうしよ?」


「あぁ、それならさぁ——」

 

 

 


出勤。いつも通り仕事を始めた。

午前中の仕事がある程度終わり、昼休みに差し掛かる頃を狙って、上司に声をかける。


「部長、お仕事中失礼いたします。」


「ん。あぁ、何。」


機嫌が良いようで、珍しくすんなりと応じてくれた上司を目の前に、レイちゃんに言われたことを思い出す。えーっと、なんだっけ? 確かあの時……。


『ありがちなのは、「姉が病気でキトクになってしまい、しばらくメンドーを見なければならないので、仕事を辞めます。」かなぁ。』


『え、もっかい言って?』


『わたしが病気で具合悪いことにしてさぁ、リオちゃんがお世話してくれることになったみたいな。分かんなきゃキーワードだけ覚えてればいんじゃね?』


みたいな感じだったっけ。そうだ、キーワードをメモっておいたんだった。


キトク、姉、メンドー。オッケー、思い出した。

上司に向き直り、事情を説明する。


「奇特な姉が面倒くさいので仕事を辞めます。」


「……おめがさん、ちょっと、あっちで話そっか。」


なぜか別室で話すことになった。

 

 

 


半分以上説教と説得を受けながら、何とかきちんと説明し、事情が事情なだけに3週間で辞めることを了解してもらえた。

良かった、これでレイちゃんのことも手伝えるし、動画にも集中できる。ちょっと胸が痛いけど。


3週間、引き継ぎをしながら、周りにもそれとなく事情を説明しながら、そして何よりも動画投稿に力を入れて過ごした。

ネタもいっぱい考えた。うんちのモデリング案が通ったから、調子に乗ってリアルうんちの3Dスキャンを提案したらめちゃくちゃ怒られた。


いつまでも忙しそうなレイちゃんに、何度か、編集を手伝おうかって、提案もした。

でもそのたびにレイちゃんに、


「べつにいいよ。仕事忙しいでしょ。」


と言って、断わられた。

 

 

 

 

最近のリオちゃんは、ちょっと心配になるくらいがんばってる。

いい大人なんだし、心配するほどでもないかもしれない。でも姉として、妹のことは気にかけなきゃなって。一応。


「ねぇレイちゃん、やっぱりさ、忙しそうじゃん。編集教えてよ。」


「仕事辞めてからでもいいってば。」


「でもさぁ、昨日もカップヘッドだったし、そういう長いやつの編集毎回大変そうじゃん。なんか手伝えることない?」


いつもこの調子だ。

家でもなにか手が空くと、「手伝おうか」と声をかけてくれる。前まで、わたしが1人で作業していても、1人でポケ○ンやったりベッドで寝てたりして好きに過ごしてたリオちゃんが。


「いいって。ぜんぶレイがやるから。……あっww」


しまった。編集で動画観すぎたかな……ふだんの生活で一人称自分の名前とか、恥ずかし……。

まぁリオちゃんも笑ってくれるでしょ。編集の話もそれでお流れになるだろうし。


「……レイちゃんさぁいっつもそうじゃん。」


そうはいかなかった。


「えっなに?」


「いっつもそうやって1人で無理してさぁ。確かに私じゃ頼りないかもしれないけど、もうちょっと頼ってくれてもよくない?」


「いや、ホントに1人でだいじょうぶだよ? あと1週間でしょ?」


「でも……!」


粘るリオちゃんにどうやって説得するか考えてしまう。


「レ、……わたしはお姉ちゃんだからさぁ、だいじょうぶだから。ほら、早く風呂入って寝、」


「お姉ちゃんなんて思ったことない!!」


急に大きな声を出すリオちゃんにびっくりして手が止まる。

えっ、リオちゃんってそんな大声出す子だっけ……というか何にそんな怒って、


「……レイちゃ、のこと、お姉ちゃん、なんて、思ったことないし、」


え、リオちゃん、泣いてる?

ふと振り返ると目が合った。泣いてる。


「そりゃさ、……いちおー、Twitterとか……だとっ、姉、とか言ってるけど、だっ……て、双子じゃん……!」


目をそらさずに、必死に訴えかけてくる。


「……ちょっと、トイレで頭冷やしてくるわ。おっきい声出してごめん。」


そう言い残して、リオちゃんは部屋を出た。

さすがに、そのままにしておくのは気がひけるので、少し間を置いてトイレに向かう。


リオちゃんは、トイレの中で歌っていた。これはあれだ、前にソロで歌ってみた出してた、『シルエット』だ。

途中まで鼻歌だったけれど、次第に小声で歌い出す。


「覚えて、ないことも……たくさん、あったけど……ぉ〜お……」


トイレのドアに背中を預けて、しばらく聴いていた。

何か気持ちを落ち着けるとき、それから盛り上げるときとかに、わたしたちはよく歌を歌う。今も、たぶんそういう気分なのかなぁ。


「リオちゃーん……。」


最後まで歌い終わったタイミングを見計らい、軽くノックをする。


「……、レイちゃん、ごめんねぇ。」


リオちゃんに先に謝られてしまった。

でも、わたしが悪かったんだよね。リオちゃんを妹扱いして、子ども扱いしてた。

ぜんぜん違うのに。わたしたち、双子なのに。


「わたしのほうこそさぁ、ごめんね。」

「これからは、リオちゃんにもバンバン頼ってさ、動画編集とかもさぁ、やってもらおうと思ってるから。」


「……うん。ありがとぉ。」


怒っても泣いてもない、落ち着いた声だ。むしろ感謝するのはわたしのほうなんだけどなぁ。


「じゃあさぁ、もう出てきてよ。」


今日のところは、これで仲直りってとこかな。よかったよかっ


「今、うんこしてる。」


「うんこしてんの!?www」


予想外の答えに吹き出してしまった。


「のんきなやつだなぁあんた!www」


「「wwwwwwwwwwww」」


こうして今日は平和に終わった。ちなみに、この泣いたエピソードはヨルタマリで暴露した。

 

 

 


しばらくして、リオちゃんの退職の日がやってきた。

送別会で飲んで帰ることは聞いていたから、しばらく待っていると、玄関のドアが開く。


「おっかえり〜。結構早かったじゃ、うわっ、」


「レイちゃ〜ん。」


酔った勢いで抱き着かれて、支えきれず壁にもたれかかる。1人で歩けないくらい飲んじゃったの?


「ちょ、自分で歩け!」


「ん、ちょっとフラフラするかもぉ。レイちゃん大好きぃ。」


「もー、はいはい……。」


今日くらいはしょーがないか、と、甘えられるまま、軽く抱き返した。今日まで、本当によく頑張ったもんねぇ。

リオちゃんは、そのまま話を続ける。まるで顔を見せたくないみたいに。


「レイちゃん、大好きだよ。いっつもさ、ありがとぉね。心配もしてくれて、やりたいこともさせてくれてさぁ。」


いつになく声が真面目だ。


「たくさんさぁ、我慢してくれたよね。毎日、家で待っててくれて、ありがとぉ。」


そういえば、顔はよく見えないけど、酔っ払いほど耳は赤くない。こいつ、ホントは酔ってないな?


「急に仕事辞めるって言ってさ、不安にさせてごめんね。」


酔いにかまけたフリをして、泣く子をあやすように語りかけてくる。


「だからね、レイちゃん、」


ああ、そっか。顔を見せたくないんじゃない。


「そのまま、泣いてていいよ。」


顔を、見ないでいてくれてるんだ。


どうしよ、何か返さなきゃ。何か、何か言ってあげなきゃ。


「リオちゃん、」


「うん。なぁに、レイちゃん。」


大好き、ありがとう、ごめんね。全部言ってくれた。でも胸が詰まって出てこない。代わりに、ぎゅっと抱き返す。

もういいや。全部全部伝わってしまえ。どうせ、リオちゃんにはお見通しなんでしょ。


「——うん。」


何を了解したか分からないけど、きっと、たぶん、伝わった。

猫の耳を撫でるように、ぴょこぴょこを触られる。ゆっくりと、わたしから離れながら、リオちゃんは口を開く。


「……レイちゃん、私——」


ン゙ン゙、という軽い咳払いが聞こえる。


「リオはさぁ、」


両手を広げて、いつもの、撮影用の声で、


「レイちゃんとさ、楽しいこといーっぱいできたらなって、思ってるよ。」


それは、宣言だ。普段自分からは言いださないリオちゃんが、仕事を辞めてまでしたかったこと。


「——うん、いーっぱい、楽しいことやろう……!」

 

 

 


そのあとわたしは、ツイッターのbioを変えた。

リオと一緒に楽しむ。これからもずっと。