がちゃり。ドアを開けて、誰もいない部屋に2人で声をかける。
「「ただいまー。」」
今日は朝早くから買い物に出ていた。
「さむっ。エアコン入れよー。」
季節は冬。外と変わらない室温に、思わずリオちゃんから声が漏れた。
「寒いねー。でも今日はさぁ、たっくさん買ったよねっ。」
「だいたいレイちゃんのだけど!」
「いやぁ〜動画で開封するの、たんのしみだなぁ〜! いぇいいぇいいぇいいぇいいぇい!」
えぇー、話聞いてないよこの人、という顔をしたリオちゃんを尻目に、買ってきたものを机の上に置く。開封動画は最近視聴者さんの中でも人気が高いし、何より自分自身が楽しみなんだよなぁ。
「でもさー、いま動画撮るの寒いから、部屋暖まってからにしよー。」
リオちゃんの提案に、確かに、と頷く。まだコートも脱げないくらいの室温だし、もう少し待ってもいいかな。
数分後。
「ぜんっぜん暖まらねーなぁ……。」
ソファに座って寒さに凍えながら待っていたけど、一向に暖まらない。
ふとリオちゃんの方を向くと、いつの間にか毛布を二枚着込んでニンテ○ドース○ッチをやっている。
「ちょっとリオちゃん! それ1枚レイの部屋の毛布じゃん! 返して!」
「やぁだ! リオは寒いの!」
「レイも寒いんだけどぉ!」
あまりの寒さにリオちゃんの着ている毛布を引っぺがそうとするも、渡してもらえるはずもなく。
「じゃあ、これでよくね?」
そう言ってリオちゃんは、私をもう一度ソファの片側に座らせた。そして狭いほうの隣に座ったかと思ったら、脚を私の脚の上に乗せて、身体をこちらに寄りかける。そのまま毛布を上からかけて、スイッ○の続きを始めた。
「ホラ。やっぱ俺、天才かなって。」
確かに温かいけど……。
「ゔ、ジャマ……ww(小声)」
「ねぇ邪魔って言わないで!」
そんなやり取りをしながら、気が付けば、心地よい重さと温もりにまどろんでしまっていた。
目が覚める。昼過ぎだろうか。
「寝てたぁ……。」
ふと隣を見ると、リオちゃんもすやすやと寝息を立てている。
「リオちゃん起きてー。動画撮るよー。」
「んー。」
リオちゃんの身体を少し起こす。それに合わせて、寝ぼけたリオちゃんが私の肩辺りを掴む。すると毛布の足元部分が少し浮き、冷気が私の脚を撫でた。
「寒っ!!!!!」
「声デッカ……。」
少し不機嫌気味に起きるリオちゃん越しに、エアコンのほうを見る。機械音は聞こえるから、ついてるはず。なのにこの温度はおかしい。よくよく目を凝らして見てみると——
『 冷 房 18℃ 』
「リオちゃん!!wwwwwwwww 起きてwwwwwwww」
「なぁにレイちゃん!」
「今冷房!!wwww」
「え!? マ!?ww」
その日、少しだけ風邪を引きかけた。